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2014/02/25

向田邦子氏は雑音を気にしない

シナリオ界見聞録

月刊ドラマの創刊号からわずか2年の間でしたが、向田邦子氏には何度も本誌に登場していただきました。初めてお目にかかったのは、創刊間もない1979年10月12日、場所は東京・青山のサンドリアという喫茶店。ジェームス三木氏の連載インタビューのゲストとして。トークが始まっていきなり、ガガガガとコンクリートを砕くような工事の音が。すぐには止みそうもない。こちらは大慌て。声も聞きとりにくいし、録音が心配だ。「どうしましょうか、場所を変えましょうか?」と私。その時、向田氏、すこしも騒がず、きっぱりと「いえ、大丈夫でしょう」。そのままインタビューを続行しました。さすが、元編集者、読みが鋭いのか、工事音はそれほど続かず止まりました。物事の細部を観察し洞察し、人間の心の深部を描きだした作家は、大らかで気性のさっぱりした方でした。