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2013/10/07

水木洋子脚本の普遍性

シナリオ界見聞録

弊社からシナリオ文庫シリーズ(ほぼ新書サイズ)で『水木洋子シナリオ集』を出したのは1978年11月。掲載作品は「ひめゆりの塔」「純愛物語」「キクとイサム」の3篇。掲載作は自選。この3篇だといずれも今井正監督なので、内容的にやや社会派に偏った印象を与える、というか、このシリーズは続刊ももくろんでいたので、同系でまとめたと解釈してほしい。その頃、東宝で「ひめゆりの塔」がリメイクされた。私との会話(すごいお喋りでした)では、その出来に必ずしも満足ではなかったようだったが、最後に流れる「さだまさしの歌が良かった」という言葉が印象に残っている。当時72歳で、すでに映画・テレビの仕事はほとんどされていなかったけれども、漫画「はいからさんが通る」のドラマ化、劇化について「あれは私のモノね」と意欲的だった。
水木氏は社会派と誤解される向きもあるが、決してそうではない。人間観察、人間描写、特に女性の生き方を鋭い眼差しで洞察した作家ではないか。当然エロチシズムもある。そしてユーモア感覚。『裸の大将』などは抱腹絶倒もの。若き日には舞台俳優として主役を演じたこともある水木氏。徹底的な取材から浮かび出る人間ドラマ。「あにいもうと」「おとうと」がたびたびリメイクされるのは、時代を超えた普遍性があるからだ。
水木氏の全貌は弊社刊「脚本家 水木洋子」(加藤馨・著)をお読みください。